スケジュール管理や顧客情報の管理、商談内容の記録など、営業活動を円滑に進めるために活用できる手帳は、営業職にとって欠かせないビジネスアイテムです。
ITツールが発展している現在、スケジュール管理や商談の記録はWebツールで行っているケースがほとんどだと思いますが、トップ営業マンと呼ばれる人たちは、敢えて手帳を使ってスケジュール管理をしていることをご存知でしょうか。
本記事では、トップ営業マンが手帳を使う理由と使い方のコツを解説します。
トップ営業マンが敢えて手帳を使う理由
スケジュール管理のためであれば、Googleカレンダーや会社で用意されているスケジューラーで十分役立つでしょう。しかし、トップ営業マンが敢えて紙の手帳を使っているのは「自分の歴史」をいつでも振り返るためです。
優れた営業成績をあげるためには、ただ顧客とスケジュールの管理をすればいいというわけではありません。もちろん、それらは営業活動を行う上で必要な業務ではありますが、それ以前に、トップ営業マンほど「自分のことをよく理解している」という共通点があります。
資料作成や提案、対面の商談と非対面の商談など、人によって得意不得意は異なります。すべてが完璧な営業マンなど存在せず、大切なのは「自分の強みや弱み」を理解して、適切な場所でそれを発揮できるかどうかです。
自分がどんな業務に興味があって、どんな業務のときにパフォーマンスが低下したり苦手意識が芽生えるのか。それらをわかりやすく整理・認識するために手帳が役立ちます。
成長を常に実感する
日々忙しい営業活動の中でタスク管理だけをするようになってしまうと、何よりも大切な“自分自身”を見失いがちになります。アポイントを取るのも商談をするのも、すべて自分自身に他なりません。営業を単なる業務として捉えてしまうと、目に見える数字でしか進捗を把握できなくなり、結果的に正しく自分を分析できなくなるでしょう。
手帳は、自らの手でスケジュールやタスクを書き込むため、そこに書かれていること以上に、書かれた文字から当時の心境や苦労、そしてそれを乗り越えた今の自分との対比など、Webのスケジューラーでは感じ取れない成長の実感を得やすくなります。
小さな成長を積み重ねていける人でなければ、地道な業務の繰り返しとなる営業で成功することはできないでしょう。
書き込むことで経験を記憶する
Googleカレンダーに記入した予定を、消化した後に振り返る人はほとんどいないと思います。予定は過ぎたら過去になり、過去の予定をわざわざ見ようとする意味はないためです。しかし、前述のとおり過去も含めて“自分史”であり、一つ一つの経験を何となく消化してしまうのは非常にもったいない。
「タイピングする」よりも「手で書く」方が記憶には残りやすいため、Webのスケジューラーに打ち込んだ予定よりも、手帳に手で書きこんだ予定の方が経験を記憶しやすくなります。
手帳を見て、字が乱れている日のスケジュールは「あーこのときはすごく大変な時期だったな」とか、何も書かれていない日のスケジュールは「何も書けないほど忙しかったんだな」といったように、例えそこに何も書かれていなくても手帳が当時を記憶しています。
過去の自分を振り返りやすい
トップ営業マンほどできなかった頃の自分を強く記憶しており、定期的に原点回帰といいますか、迷ったときは過去の自分と向き合う傾向があります。優秀な営業マンほど、他の誰かと比べて目標を見失ったりせず、過去の自分と比べて、確実に成長を積み重ねていきます。
色んなことを乗り越えてきた今の自分を褒めることはとても大切であり、クライアントを幸せにするためには、まず営業マン自身が満たされていなければなりません。どこか悩んでいる状態では、それが表情などに現れてしまいクライアントに伝わってしまうかもしれません。
手帳に書かれていることは、振り返りたいときにいつでも遡れます。「自分の歴史を手帳と一緒に歩んでいく」ことはデジタル媒体のカレンダーやスケジュール管理のアプリではできないことです。厳密には近いことができるかも知れませんが、自分の手で書き込む文字だからこその価値は生めないでしょう。
トップ営業マンが実践する手帳の使い方・書き方
一般的に、手帳にはスケジュールやその日やることなどを記載します。手帳の種類によっては、メモ欄があったり各記入欄が予め分けられていたりと違いがあるでしょう。
ポイントは、手帳をただ使うだけでは効果は薄いということです。前述したような手帳を使うメリットを最大限発揮するためには、以下の2つを実践するような使い方・書き方をしましょう。
- 「月次目標」と「週次目標」の2つを立てる
- 「達成目標」と「行動目標」の2つを立てる
手帳の使い方で大きな差がつくと言っても過言ではありません。トップ営業マンには目標管理が上手いという共通点があり、目標管理をする上で手帳が大いに役立ちます。
「月次目標」と「週次目標」の2つを立てる
営業マンはアポイントをとるために電話をしたり飛び込み営業をしたり、1日に何件も商談をしたりと、常に行動にお言われやすい仕事です。「何人と会ったか」「商談を何回したか」など、常に目標となる数字を追いかけるの営業においては、日々の行動管理が必要になります。
目標や行動の管理が下手な営業マンは、目標を月次で追いがちです。月の目標をクリアすることだけを目指しており、月単位で達成・未達成が分かれます。
しかし、それでは月初に余裕が生まれやすく、月末に近づくほど未達成のノルマに追い込まれやすくなるでしょう。多くの営業マンは、月末になるほどウっと来るのは「月の目標を達成しようとしているから」なのです。ノルマは月ごとに設定されている場合がほとんどですので、その締めに合わせて動こうとすると後半がしんどくなるのは当然ですよね。
反対に、行動管理が上手い優秀な営業マンは、目標を月次だけではなく週次でも追いかけます。それによって、1年間でのゴール回数が12回(月の数)から52回(週の数)に増えます。
目標は高いほど達成するのは難しくなります。また期間が長いほど高い目標に感じやすくなります。だからこそ、目標を小さく細分化することで、一つ一つの目標を達成しやすくした方が確実にゴールに向かいやすくなるのです。何となく大きな目標のために長めの期間でもって行動するのではなく、期間も数字も細分化して「少し頑張れば達成が目指せる目標」に落とし込めばいいということです。
また、小さなゴールを短いスパンで積み重ねていく方が“歩みを止めない習慣”を作りやすいメリットがあります。
「達成目標」と「行動目標」の2つを立てる
目標をたてる際は、「達成目標」と「行動目標」の2つをたてましょう。マーケティング用語では「達成目標」がKGI、「行動目標」がKPIと呼ばれます。日々のスケジュールには「達成目標」だけではなく「行動目標」も手帳に書き込みましょう。
Webのスケジューラーなどに売上目標を記入する人はいても、行動目標を小まめに記入する人はいないでしょう。ですが、手帳であれば自然に書き込みやすくなるのです。
達成目標(KGI)は、わかりやすくいえば会社から課せられるノルマです。月や年単位で達成しなければならない数字のことです。行動目標(KPI)は、達成目標(KGI)を達成するために必要と考えられる数字目標です。例えば、「1件の契約を取るためには、アポイントが10件必要」とした場合のアポイント数がKPIです。KPIを達成した結果、KGIを達成できる。つまり「これを積み上げていけば到達できるはず」という達成への階段を組み上げるためのものです。
営業の行動管理で大切なのが、この行動目標(KPI)です。行動目標を立て、それを達成し続ける営業マンは安定的に売上を作ることができます。反対に、月の売上目標(ノルマ)だけを達成しようと頑張ってもなかなか達成できません。
行動目標は週次で立てましょう。例えば、「今週1週間で○○件のお客様と会う」や「1日1商談し、1週間で計5件商談する」などの目標です。達成できるかどうか怪しい目標ではなく、きちんと行動していれば達成できる目標にしましょう。無茶な目標を立ててしまうと、週次に細分化する意味がなくなってしまいます。
手帳で目標達成の習慣を作る
当然ですが、手帳に目標を書き込んだだけでは何も変わりません。願っただけでは試験に受からないから勉強をし、目標をたてただけでは痩せないからダイエットします。そこには何かしらの『行動』が伴います。トップ営業マンほど、それを理解しています。
手帳には手書きの文字で目標と日々の行動結果を記すことができます。自分の字で書くと、そこに意識が向くからです。自分の言葉で発したことが実現しやすくなるように、自分の字で書くことで「やらなければならない」と意識しやすくなり、書いたことを達成し続けるマインドセットを作りやすくなります。
営業が途中でつらくなったときも、手帳に書いたことが良い意味で「目標を見て見ぬふり」をさせてくれません。「自分で書いたことだから」と思わせてくれるのは、アプリやデジタルではなかなか感じにくい感覚でしょう。
目標に対する意識が変われば、結果も変わります。達成できないと思っていては行動が変わりません。とはいえ、人間は弱いから一人ではブレてしまう。そんなとき、手帳が相方となって一緒に目標に向かってくれます。
18年続くロングセラーの『営業手帳』
2023年版で18年目の刊行を迎える『和田裕美の営業手帳』。世の中にはさまざまな手帳が売られていますが、これほど長く愛され続ける定番商品はけっして多くありません。
「営業手帳」という名称ではあるものの、愛用者は職業・年齢・性別を越えて多彩な層に広がっています。
スケジュール管理をするページの他に、「営業基本動作」「陽転思考十ヵ条」「元気が出る言葉集」など、この手帳ならではの各種コンテンツが掲載されています。
手帳は、24時間そばにいてくれる相棒であり宝物です。調子が良いときも悪いときもモチベーションを上げてくれます。
目標に対して思うような結果が出なかったとしても引きずらないでほしいです。もちろん行動目標を立てて結果を出し続けることは大切ですが、ノルマが達成できなくても、翌週、また翌週とチャンスは巡ってきます。 何よりも大切なのは、自分が気づいたことや感じたことを手帳に書きとめて、自分の足跡を残すことです。ぜひ、楽しみながら手帳と向き合っていただければと思います。
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