「営業はもうやりたくない」と感じている方の多くは、営業という職種そのものに懐疑的になっていることでしょう。
営業がうまくいかなかったり成績が伸び悩んでいるとき、「自分は営業に向いていないんじゃないか」と自信を無くしてしまうものです。
同時に、営業に対する一般的なイメージが売り込みや飛び込み、テレアポを想起させるように、お客様から煙たがられる存在だと認識してしまってはいませんか?
しかし、営業することが嫌になる本当の原因は“向き不向き”ではありません。営業という職種の、本来の在り方を多くのビジネスパーソンが知らないだけなのです。
「営業はもうやりたくない」と感じる理由TOP3
営業が嫌になってしまう理由は人それぞれですが、ほとんどは「ノルマがきつい」や「断られるのがつらい」ではないでしょうか。
実際、日本労働調査組合が調査した結果によると、営業がつらい理由の1位はノルマであり、次いでお客様対応となっています。それに関連して、社内におけるプレッシャーやコミュニケーションも「やりたくない」と感じる主な理由になっていることがわかります。
出典:日本労働調査組合(営業職の勤務意識に関するアンケート)
いずれの理由も、営業という役割に不満を持っており、人によっては不健全な仕事にすら感じてしまっているでしょう。そして、「自分」ではなく「自分以外」のことが理由となっていることにも注目です。
続いて、それぞれの理由ごとに「なぜ嫌になってしまうのか?」をわかりやすく説明します。
1位:ノルマ
ノルマが設定されるのは、営業に限った話ではありません。しかし、営業=ノルマがきついと連想されるように、達成できない目標を追わされる営業マンは少なくありません。
ノルマとは目標のことであり、それ自体は設定されるべきもの。ですが、何のために自分がその目標に向かうのか?が腹落ちしていないと、当然ですがただつらいだけの活動になってしまいます。
多くの営業マンは、契約よりも断られる回数の方が圧倒的に多いでしょう。「必要ない」と言われ続ける中で、「自分は何のためにこんなことをしているんだろう・・・」と迷い、さらに目標を見失ってしまいます。“自分が営業をする目的”を明確にできていないと、ノルマはただ負わされるだけの重荷となり、自分を苦しめるものとしか認識できなくなってしまいます。
2位:お客様の理不尽さ
業界によっては未だ「お客様は神様」のような風潮があり、営業マンは、お客様に対して平身低頭するものと思われてしまっているでしょう。本来、両者の間に上も下もありません。お客様は必要だからサービスを求め、営業マンは対価としてサービスを提供しているだけからです。
ではなぜ、お客様が理不尽だと感じられるような状況が生まれるのか?それは営業マンが、サービスを購入してもらう理由を“自分都合”としてしまっているからです。
「買ってもらわないと困る」
「解約されると困る」
本来、必要としていたサービスや商品を使えなくなって困るのはお客様の方だと思いませんか?
お互いがWin-Winの関係で取り引きできていれば、正しい関係性でコミュニケーションをとることができます。どちらか一方が理不尽だと感じるような関係を生むのは、「営業は買ってもらう立場にある」という誤った認識があるためです。
3位:クレーム対応
クレームが発生すれば、誰だって嫌な気持ちになりますよね。その後の対応を考えることもストレスになりますし、なにより、怒りや悲しみの感情を向けられて平然としていられる人は多くありません。
とはいえ、クレームが発生するのには必ず原因があります。クレームという表面的な出来事に引っ張られるのではなく、なぜクレームが起きたか?の元をたどれば、その多くは「期待してたことと違った」という根本的な原因に気付くことができます。
“お客様の期待”とはなんでしょうか。それは、サービスへの期待の場合もあれば、営業マンという人への期待の場合もあります。クレームは期待の裏返しであり、優良顧客になり得るポテンシャルが高いお客様であるとも言えます。「ピンチはチャンス」という言葉のとおりで、自身がお客様のどんな期待に応えるためにサービスを提供しているのか?に立ち返ることができれば動揺しなくなるでしょう。
「営業はもうやりたくない」を生む本当の原因
「営業はもうやりたくない」と感じる主な理由は上記のとおりですが、実はこれらを発生させてしまう本当の原因は、もっと根本的な考え方にあります。それが以下の3つです。
- 営業は売り込みだと勘違いしている
- 営業のゴールは契約だと思い込んでいる
- お客様を数字だと認識していまっている
スタートの考え方が間違っているために、ノルマやお客様とのコミュニケーションをネガティブなものにしか捉えられない状況を自ら作ってしまっているケースが多いです。
営業の役割は「お客様の課題を解決すること」です。もしこれが、キレイごとや理想論だと感じてしまう方は、マインドセットを大きく切り替える必要があります。
営業をつらいものにしてしまっている原因は、実は、周囲から植え付けられた営業に対する間違ったイメージそのものです。
営業は売り込みだと勘違いしている
前述のとおり、営業の仕事は売り込みではなくお客様の課題解決です。言い換えれば、解決すべき課題がわかっていない状態では売り込みにしかならないということです。
自分では売り込んでいるつもりはなくても、結果的に売り込みをしてしまっている。もしくは、営業マンがそもそも課題を感じられていないにも関わらず、無理やり買ってもらうためのプロセスを作ろうとする。これでは、「売ろう!売ろう!」という気持ちが先行し、いつまでたってもソリューションにはならないでしょう。
営業マンがサービスを『売る』のは、それが課題を解決するために必要なアクションだからです。『売る』のは最終的に達成すべきゴールではなく、未来をつくるための一手段でしかないということです。
営業のゴールは契約だと思い込んでいる
ノルマを達成するために営業をしている方は、営業のゴールは契約だと思い込みやすいです。契約数がそのまま営業成績になる会社が多いため、自分(自社)都合で営業活動を行ってしまっているせいでしょう。
たしかに目の前の契約数を増やすことは大切。ただし、短期的にみた場合に限っては・・・のお話です。企業はもちろん、営業マン自身も、長いキャリアを歩むためには長期的な視点から“お客様”という存在を考えなくてはなりません。
営業のゴールが契約だとした場合、ひとつ契約したら、また次の契約を求めて奔走して・・・。その先にあるのは、果たしてお客様の幸せでしょうか。また、お客様の幸せをなくして営業マンはどんな価値を提供できるのでしょうか。
契約はむしろお客様にとってのスタートであり、営業という仕事の、本来の価値提供はそこから始まります。
お客様を数字だと認識していまっている
ハッキリと認識しているつもりはなくても、上記のような営業に対する間違った認識を少しでも持っていたら、結果的にはお客様を数字だと認識していることと大差ありません。
「営業成績をあげて出世したい」
「出世して給料を増やしたい」
「給料を増やして生活を豊かにしたい」
このように考えることは至極当然ですが、そのために誰かを不幸にしていいことにはなりません。自分の幸せと他人の幸せはトレードオフではなく、“お客様を幸せにするから、自分に利益が還元される”のが正しいビジネスの形です。
もし今、「営業がつらくてもうやりたくない!」と感じているのであれば、本当はお客様を数字として見たくないのに、数字として見なければならない環境に迎合できていない状態かもしれません。
言い換えれば、それに悩めるということは、正しい営業の在り方を受け入れる準備ができているということです。
営業が本来やるべきことは「ファンづくり」
営業の世界では、お客さんと契約を結ぶことを「刈り取り」と表現するシーンが少なくありません。「見込み客を刈り取る」といった文脈です。「刈り取る」と表現している通り、このような言葉を選ぶ人は、お客さんに幸せになってほしいとは考えていないでしょう。
刈り取った後はポイッ。刈り取られた側は十分なアフターフォローをしてもらえません。結果、リピートの購入もなければ解約率も高まります。
そんな『狩猟型』の営業を続けていくとどうなるのか?成熟した市場のπは限られているため、目の前のお客さんを奪い合うことになります。毎月新規のお客さんを探してたくさんの契約をとり続けるのは難しいですし、なによりしんどいですよね。だからこそ、狩猟的な考え方ではなく、『農耕型』の営業を目指さなければなりません。
農耕型の営業は、わかりやすくいうと「お客さんをファン化させる」ことです。見込み客に対しては未来をイメージさせ、契約というスタートをきった後は、伴走してフォローしていく。そうすることで、ファンとなったお客さんが別の見込み客を紹介してくれ、ファンが別の“ファン候補”をつくってくれる。
そんな『ファンづくり』が、営業の当たり前になる時代がきています。
営業におけるファンづくりの5つのポイント
営業におけるファンづくりの5つのポイントは以下です。
- 問題解決志向を持つ
- 目先の売上よりも半年先の売上を目指す
- コミュニケーション能力=仲良くなることではない
- お金のハードルを超える
- 量と質をトレードオフにしない
「営業はもうやりたくない」と悩む人は、おそらくこれらの思考を十分にできていないと考えられます。むしろ真逆のことをやってきてしまった結果、営業という仕事に懐疑的になってしまったのではないでしょうか。
営業は体育会の人が向いている仕事でも、自己中心的な人が成果をあげやすい仕事でもありません。人の気持ちがわかる『優しい人』こそがやるべき、お客様から選ばれるための努力が求められる職種です。
問題解決志向を持つ
世の中には、“売るため”に生み出された商品なんてものは厳密には存在しません。すべての商品は、何かしらの“問題”を解決するために生まれています。
例えば「ラーメンを食べたいが、お店に行かなければ食べられない」という問題を持つ人がいたとします。しかし、ラーメンはお店に行かなければ食べられません。そこで「お店に行かなくてもラーメンが食べられる」ようにインスタントラーメンが生まれ、問題を解決してみせました。
このように、営業が行うべきソリューションは必ず「問題を解決する思考」から始まります。
そして人々が抱える問題には次の二つがあります。
- ①今すぐ解決したい問題
- ②将来的に解決しなければいけない問題
もし、今目の前で家が燃えていたら、悩むまでもなく消防車を呼びますよね。消火(解決)するためにコストを払うかどうか迷う人なんていないでしょう。
次に、今は燃えていなくても、火事が発生したときに備えるため、火災保険を検討する人もいます。前者が①の問題で、後者が②の問題です。
今すぐ解決したい問題を抱えている人は、わざわざ難しい提案をしなくても商品を買います。タイミングがよければ売れるでしょう。
では、今は必要としていない人はどうか?
営業マンの問題解決思考が問われるのは、この「将来的に解決しなければいけない問題」を抱えている人達を幸せにできるかどうかです。
目先の売上よりも半年先の売上を目指す
営業に限らず、売上のノルマを課せられている組織には、「LTV(顧客生涯価値)」というマーケティング用語が頻繁に用いられます。
LTVとは、ひとりのお客様が、生涯にわたっていくらの売上をもたらしてくれるかという指標です。そのため、LTVを高めることが売上をあげるための重要なポイントになりますが、目先の売上ばかり追っていたらLTVは下がり続けます。
「売っていこう!」しか意識していない営業は、目先の利益しか見えていません。それでは、毎月どぶ板営業を続けていかないとダメということになってしまいます。市場規模やニーズは決まっているわけですから、ごり押しや、論理で丸め込んだり、お願いして受注するスタイルには限界があります。
さらに忘れていけないのがSNSの普及。ひと昔前であれば、自身の体験か知り合い伝いでしか知れなかったことが、今ではあらゆる情報を簡単に知ることができます。悪評はたちまち広がりますし、逆にいえば良い評判も回りやすい。つまり、搾取を目的とした営業では、クライアントと継続的な関係には絶対になれないということです。
だからこそ、目先の売上よりも、半年先の売上を目指していかなければなりません。“契約率”よりも“継続率”に目を向けてみてください。
コミュニケーション能力
=仲良くなることではない
「営業は売り込みではない」と伝えると、それならばコミュニケーション能力の高さでサービスを購入してもらおうと考える方がいます。決して間違いではないのですが、これも少し考え方がズレています。
営業におけるコミュニケーション能力とは、お客様が話を聞きやすい姿勢を作る能力のことです。「怪しそうだから」や「営業だから」といった疑念が、正しいコミュニケーションの腰を折らないように、心をニュートラルな状態にしてもらうためにコミュニケーションをとります。
そのためには、商材やサービスが具体的にお客様の課題をどのように解決し、どんな未来に向かえるのかを営業マン自身がイメージできていなければなりません。
例えば、病院にいってお医者さんに処方箋を出してもらうとき、「薬の値段が高い!」といって断る人はそんなにいないですよね。
自分よりも知識があると思うから、お医者さんの言葉を信用することができます。もし、待合室で隣の患者さんに「この薬を飲んだら良くなるよ」と言われても、「じゃあいただきます」と素直に受け取らないと思います。
こちらが売りたいのではなく、あちらが売ってもらいたい。そう思ってもらえるような関係性を作ることが営業のやるべきことです。
お金のハードルを超える
営業がつらいと感じる人は、総じてお金の話が得意ではありません。お金の話になった途端、自信を無くしてしまったり、お金の話を切り出しづらいと感じてしまうのです。「断られるかもしれない」という恐怖心が、心理的な『お金のハードル』を生み出してしまうからです。
言い換えれば、商品の提供価値に自信がないから感じてしまうものであり、今それを必要としていない人に売る理由がハッキリと見出せていません。
仮に、あなたが今お茶を売りたいとしましょう。しかし、お客様はお茶を必要としていません。そのような状況で「とても美味しいんです」や「他と違って特別なんです」とメリットを伝えても当然ながら響きません。メリットは理解できても、得られるベネフィット(価値)がイメージできないからです。
では「健康に良いんです」と説明したらどうか?これも実は間違いです。なぜなら、お客様は『将来も健康でい続けることの価値』がそもそもイメージできていないからです。健康が一番であることは、なんとなくはわかります。けれど、今アクションを起こさなければならないとまでは感じていないんです。
必要なのは未来へのイメージ。この場合、『ずっと健康でいることで、将来的に得られる特別な体験』をどれだけ具体的に伝えられるかが重要なのです。
お金のハードルをこえるのは、トークの技術でも心理戦でもありません。未来への具体的なイメージです。それを説明するためには、営業マン自身が価値を感じており、自らが「ほしい」と思えていなければなりません。
量と質をトレードオフにしない
量と質はトレードオフの関係にあります。それは事実だと思います。量を求めれば質は高めづらく、質を求めれば量をこなせない。そんなジレンマは誰しもが一度は感じたことがあるでしょう。
ですが、お客様に伴走する営業マンは量と質を完全なトレードオフにはしません。基本姿勢が正しく、やるべきことを選択した上で行動できるからです。
量を求める人の多くは、「売上をあげなければいけない」「行動目標を達成しなければいけない」など、お客様とは無関係の“自分都合の動機”があり、そもそも売ろうとするサービスがなぜ存在するのか?という本質から遠ざかっている状態になっています。これでは量と質は両立しません。
あくまで、セールスの動機はお客様の『課題解決』のためでなければいけません。起点を間違わずに行動することで、量をこなす中でも質から離れすぎず、いわば“折衷案”を見出せます。
例えば電話営業ひとつにしても、ただアポイント獲得のために電話をするのではなく、知っておいて損はない、市場や業界の情報を提供するなどプラスαを載せることは決して難しくありません。
ひとつひとつのプラスαは大きくなくても、量が増えるほど質は積み上がります。気持ちがこもった対応を積み重ねてきたかどうかが、時間の経過とともに大きな差を生むのです。
「営業はやりたくない」と悩む人が転職する前に考えるべきこと
「営業はやりたくない」からといって、すぐに別の職種に転職するのが必ずしも自分を幸せにする選択ではありません。もちろん転職によって環境を変えれば、悩みから解放されて気持ちよく仕事ができる人もいます。
しかし、ここまでお伝えしたとおり、営業が嫌になってしまう根本的な原因は、営業に対する間違った常識に振り回されていることです。
自己中心的な考えではなく、自分自身がきちんと納得して仕事したいと思う人は、実は営業に向いており本来成果をあげられる人材の可能性が高いです。
自分が営業に向いている人間かどうか、それを確かめてから別の職種への転職を検討した方が、次の仕事も上手くいきやすいでしょう。
営業に向いている人の特徴
営業に向いている人の特徴は、主に以下の6つです。
- 人が喜ぶことに、やりがいや生きがいを感じる
- ついついお節介をやいてしまう
- 目先のことよりも、少し先のことに目が向く
- 一般論で説明されても納得いかないことが多い
- 自分が納得いかないと行動できない
- とりあえずやってみて、が得意ではない
共通しているのは自分が中心ではなく、他者の状態によって満足度が変わるということです。自分がよければいい、ではなく、関わった人が満足できているかでやりがいを感じられる人です。
人の役に立つことで、結果的に自分に利益が還元される。いわば報酬は後回しで、自分が納得いく行動を最優先にしたいという人は営業に向いています。
営業に向いていない人の特徴
営業に向いていない人の特徴は、主に以下の5つです。
- 社会や一般論で決められた正解を正解とする
- 周りと違う行動をとるのが苦手
- 右向け右、で即行動できる
- やりたいことがないから営業をやっている
- 人からの評価を気にしがち
売り込み型の営業であれば、これらの特徴はむしろ“営業向き”と捉えられるかもしれませんが、今後世の中から求められるファンづくりをベースとした営業では、向いていない人の特徴に当てはまります。
「仕事なんてそんなもの」
「営業なんてこんなもの」
このように、社会的に決められた常識や正解に疑問を感じられない人は、営業には向いていません。営業は売り込みではなく、お客様の課題を解決することが使命であると、本心から思えないためです。
この記事を読んで、「売り込むための営業はやっぱり間違いだったんだ」と感じられた人は、営業に向いている性格といえるでしょう。
営業を辞めたいのは甘えじゃない
営業に限らず、仕事を辞めたいと思ってしまうのは、その仕事に適正がなかったからです。決して弱い人間だからとか、甘えではありません。つらかったら辞めてもいいんです。
営業はとくに、社会的に間違った認識がはびこりやすく、その価値観を押し付けられてしまうケースが珍しくありません。そして、そのとおりにできない自分を責めたり、「辞めたいのは甘えているからだ」と自責の念にかられてしまいます。
ですが、営業を辞めたいと思うのは甘えではなく、むしろ営業という仕事を再定義する絶好の機会だったりします。
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